ネコと同居していると、そのかわいさのあまり、
ほとんどのことが「ういやつ」で許されてしまう。
カリカリを入れたお皿をひっくり返しても「うむうむ、ういやつ」
机に登って執拗に仕事の邪魔をしてきても「よしよし、ういやつ」
遊んでる途中に興奮して指をひっかいても「お、おぅ、ういやつ」
徹夜明けの朝に尻穴を向けて起こされても「うう〜ん、ういやつ」
しかし今回だけは違ったのだ。あんなに血が出るまでひっかかれても「ういやつ」で通してきたボクが……。別に悪さをしているわけでもないのに、ういくない。
それは仕事で机に向かっているときに突然訪れた。背後でトコトコ足音が聞こえたので、いつものように振り返ると今まで見たことのないニョッキリしたパティの姿に一瞬ギョッとして「キモい」と思ってしまったのだ。
まがりなりにもひとつ屋根の下で一緒に暮らしてきた仲間に「キモい」と思った自分が情けない。いや、何よりパティに申し訳ないと思ったボクは「いや、キモいんじゃなくて、キモくてういやつ。そう、これが“キモうい”ってやつか!」と、ほとばしる強引さでういやつ補正をして終了。
いい年をした独身男がそんなことを考えていたことが、よっぽどキモいということに、ついさっき気づいたのはここだけの話……。