「朝刊に『SUPER ネコでプッ!』の広告が出ますよ」
ネコの担当編集さんからそんな電話がかかってきた。
マジ? ボクはまず出版社のある方角に深々と一礼して、
「買います! 買います! で、どこの新聞に載るんですか?」
興奮気味のボクとは裏腹に淡々と語る担当編集さん。
「読売新聞ですよ。サイズは20cmぐらいですね。また何かあったら連絡します」と、電話を切られた。ふむふむ、読売新聞か。読売といえばジャイアンツだよな。と、勝手に思いを巡らしていた。
広島出身で小さい頃から家も近所もカープ党のボクは、東京に来てからも昔の広島市民球場に雰囲気が似ているという理由で、カープ戦に関係なく神宮球場(ヤクルトの本拠地)に友達とよく野球を観にいっていた。その中でも長野出身で熱狂的なカープファン、普段はヘアメイクをしている先輩とはカープ戦も含めて数え切れないほど神宮球場に足を運んだ。
この先輩というのが絵に描いたような完璧なイケメンで、背も高くておしゃれで、お酒の酔い方も天才的で、優しくて、仕事もできて、大御所だし、奥さんも子供もかわいいし、住んでいるのはヘリポートのある高層マンションと、ある意味、誰もが憧れるような格好いい先輩なのだ。
そんな完璧すぎる先輩が神宮球場の7回裏になると少し様子が変わってくる。ヤクルトの攻撃前に流れる応援歌『東京音頭』のイントロが聞こえてくると、いつもとは違う悪い顔になり、ヤクルトとはまったく関係ない「くたばれ、読売! くたばれ、読売!」と、拳を突き上げて大声でシャウトするのだ。そう、ハードコアバンドのボーカルがヴォイスと拳に魂を込めて叫ぶように……。
誤解の無いように言っておくとヤクルト戦の『東京音頭』ではこのフレーズがよく歌われていて「強すぎるぜ、読売巨人軍こんちくしょー!」といった、セリーグファン共通の思いを、敵味方関係なくラッキー7で歌う習わしが昔からあるのだ。
担当編集さんの電話から2日後。拳を突き上げシャウトする憧れの先輩をそっと胸の奥にしまい、読売新聞を1面からペラペラめくっていくと4面に『SUPER ネコでプッ!』の広告を発見。ボクはすかさず新聞に「ありがたや、ありがたや」と手を合わせて、すぐさま「頑張れ、読売!」の拳突き上げ! 「頑張れ、読売新聞!」とシャウトするのでした。