ボクが企画から制作まで担当させていただいた写真集『幸せを呼ぶ猫 こまり顔のハチ』(宝島社)。水戸駅近くの糸久たばこ店でアルバイトをしている、八の字まゆ毛が特徴のネコ、ハチちゃんが主役の本です。
そのハチちゃんを撮影してくれたのがボクと同い年で古い付き合いの松岡カメラマン。ボクがストリート系のファッション誌をしていた頃に、商品撮影でよくお世話になっていました。その頃から撮影の合間にネコの話で盛り上がっていたのですが、まさかその数年後にネコの本で危険なタッグを組むとは夢にも思っていませんでした。
2人でネコの撮影に行くと自分たちの知らないところで毎回事件が動き出します。撮影する松岡カメラマンの背後で、ネコの気を引くために猫じゃらしを振るボク。シャッターを押しながら甲高い声でネコの名前を呼ぶ松岡カメラマン。
「ハチゥィ〜、ハチゥィ〜」
ボクも負けじと甲高い声で名前を呼びながら松岡カメラマンの頭上でレンズに写らないギリギリのところで猫じゃらしを左右に振る。なぜ2人が甲高い声で名前を呼ぶかというと、一般的にネコは女性の高い声を好むといわれているからです。ところがネコ野郎のボクたちは興奮の余り、ただ普通に声がうわずっているだけ……。
そんなおじさん2人組が甲高い声を発している姿は、はたからみると不審者の危険水域を余裕で越えているらしく、撮影に同行していた女性編集者が猫じゃらしを振るボクの耳元で、
「あの、そーとうきてますよ。2人きてます、きてます」
と、ささやきながら後ずさりをはじめました。まるで私はこの人たちと関係ありませんよと言わんばかりに。
どちらかというと撮影にグイグイ入り込むタイプの松岡カメラマンとボク。屋内ならまだしも、屋外では怪しさを通り越して、どこからどう見ても危ない2人組に見えるらしいのです。ネコを見て甲高い声でキャッキャするおじさん by 路上。女性編集者が後ずさりするのもわかります。取りあえず通報されなかっただけでもましか。いや、真面目に働いているだけなのに。
そんなネコ好きで真面目で誤解されやすい松岡カメラマンがアプリ「思い出ぽん!」でハチちゃんバージョンを制作してくれました。誤解を恐れずにいうならば、受信料を払ってもいいレベル! あっ、ハチちゃんだけに、8チャンネルか……。